約 933,125 件
https://w.atwiki.jp/iliasion/pages/754.html
ep.510【大絶賛】台湾発!最恐ホラー映画「呪詛」ネタバレレビュー Netflixで大好評配信中! 放送内容 参加メンバー Tomo Kimura その他 名前 コメント すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/deruze/pages/416.html
レギオン 本当に大丈夫だから。 そんな、何度目かとなる囁かなる抵抗は結局虚しく終わる事となり、真冬のシャツは半ば強引に少女に捲り上げられた。 怪我人の意思を無視して行われる手当てだが、それも厚意によるものなのだから無下にするのも躊躇われる。已む無く、真冬は少女におとなしく従う事にした。 簡単な応急処置を施しただけだが、しっかりと患部を押さえてくれていた脇腹のガーゼがベリベリと音を立てて無遠慮に引き剥がされる。傷口が空気に触れ、少し沁みた。 「うわ、いったそ~」 銃弾の走った痕を見て、少女は率直に顔を顰めた。 心配そうに、と言うよりは、まるで自身が脇腹に痛みを覚えたかの様な表情だ。 「そうだ、傷口洗わなきゃ! お水お水」 少女は立ち上がり、パタパタと慌ただしくキッチンに駆け込んでいく。 その後ろ姿に真冬は、本当に深紅とは随分と違うな、と仄かな苦笑を漏らしていた。 二人が今居るのは、出会った路上からすぐ近くにある民家のダイニング・ルームだ。 ここに来るまでの短い道程の中で済ませた簡潔な自己紹介によれば、少女は名前を福沢玲子といった。 幼さ、あどけなさの残るその外見と仕草から漠然と中学生位だろうと考えていたのだが、予想に反して彼女は鳴神学園という高校の一年生らしい。 これでいて妹である深紅と一つ違いというのだから驚きだ。見た目も、落ち着きのなさそうな性格も、とても深紅と近い年頃のものとは思えなかった。 無論、人の性格など十人十色。年齢だけで一括りに出来るはずもない。 そんな事は真冬も重々承知だが、同じ年頃の妹を持つ身としては無意識に比べてしまうものだ。 (深紅……) 自宅を出発する際、不安気な表情を浮かべて自分を見送った引っ込み思案な妹の事を、真冬はついつい思い返す。 深紅は、幼い頃に両親を亡くしてからは自分以外に心を開こうとはしなかった。 同性であれ異性であれ、深紅が真に心を通わせられる友人の存在は真冬の知る限りでは一人もいない。 兄として頼られるのは悪い気はしていないが、自分もいつまでも側にいてやれる訳ではないのだ。 もう少し明るく成長してくれて、他人と打ち解けられる様になってくれるといいのだが。 例えば、そう、玲子のように明るくなってくれれば――――。 「きゃあーーーっ!」 そんな思いに耽ていた真冬の耳に届いたのは、甲高い悲鳴。玲子の入ったキッチンからだ。 まさか、怪物がいたのか。そう言えば家内の安全を確かめてはいなかった。何かが潜んでいたとしてもおかしくはない。 電車を徘徊していたナースの姿が脳裏をよぎり、鉄パイプを持ち上げた手に力が篭もった。 「福沢さん!」 呼びかけに、反応がない。 まだ出血が止まった訳ではない傷口にシャツが直接かかる事も厭わず、真冬は玲子の後を追ってキッチンに飛び込んだ。 果たして、怪物は――――何も、いない。そこには玲子がいるだけだ。玲子は、顔を恐怖に引きつらせて背後の茶箪笥にもたれかかっていた。 どうしましたか。そう口にする前に巡らせた視線が、玲子の表情と悲鳴の理由を解き明かす。 彼女が捻ったのだろう。蛇口から水が静かにシンクに流れ落ちている。その水が、ここに来る途中で見た湖と同じような赤色で染まっていたのだ。 赤錆にしては鮮やか過ぎ、どこか幻想的にも見える色合いの水。じっと見つめていると、意識がぼんやりと霞んでくるようだった。 胸の奥が不意にざわめき立った。背筋を走る悪寒に突き動かされる様に、真冬は蛇口を締めた。 「ししし、死体……」 「死体?」 「き、きっと死体が入ってるんです! ここの貯水タンクに! だから血の混じった水が出てくるんだわ!」 後ろで玲子が少々興奮気味に、冷静さを欠いた様子で言った。 確かにそれはそれで気味の悪い話だが、違う。今の水はそんな現実的な説明がつけられる代物ではない。 間近で見て理解した。あれは、真冬がいつからか見えるようになっていた『ありえないもの』に近しい存在だ。 人の理解を超えた、人が触れてはならない世界にある存在。 もしも触れればどうなるか――――悪霊に取り憑かれる事と同様であれば、精神を病んでしまうか、身体に異常を来すか。 どうであれ、ただで済むとは到底考えられない。 「落ち着いて。ここは一軒家だから貯水タンクは取り付けられていません。 死体なんかじゃなくて、今のは多分大量の赤錆か何かでしょうから、心配ありませんよ」 「…………え? あ。そうか……そうですよね」 ただ、そうと感じていても、それをわざわざ玲子に伝える必要はない。 それでなくても今はいつ恐怖に囚われても不思議の無い状況だ。 無意味に怖がらせては、パニックや錯乱を引き起こす事に繋がりかねない。 ここは、玲子をあの水から遠ざける。それだけで良い。 「それはともかくとして……とりあえず手当ては止めにしましょう。 こんなに濁った水で傷口を洗ったら余計に傷を悪化させてしまいますからね」 「あっ! そうだ!」 「……どうしました?」 「もしかしたらきれいなお水あるかも!」 言いながら、玲子はまたパタパタとダイニングに戻って行く。 切り替えが早いというか何というか。真冬は顔に2度目の苦笑を浮かばせて玲子の後について行こうとし、ふと足を止めてシンクを振り向く。 蛇口からは締め方が甘かったのか、赤い水滴が1滴、また1滴と垂れていた。 人が触れてはならないもの。近寄る事は可能な限り避けたいが、落ち続ける雫をそのままにしておいてもいいものだろうか。 蛇口を締め直すべきか、少しだけ迷う。その間に水滴の落ちる間隔は段々と長くなり、やがてシンクは静かになった。 水滴の止まった蛇口をしばらく眺めて、真冬はキッチンを後にした。 ダイニングに戻ると、玲子は自身のバッグを抱えて一枚の用紙を眺めているところだった。 水があるかも、と言っていたのだから、バッグの中に水筒でも入れていたのだろうか。 玲子の持つバッグは運動部の学生が部活動で使用する類のバッグのようだ。水筒を持ち歩いていたとしても不思議はない。 しかし、もしも玲子がその水筒の水を使って手当てをするつもりならば、それは絶対に断らなくてはならない。 水道から得体の知れない液体が出て来るこの世界では、飲料水はいつ手に入れられるかも分からない貴重品だ。自分の手当てなぞに使用する訳にはいかない。 真冬はその旨を伝えるべく声をかけようとして、玲子の様子がおかしい事に気付いた。キッチンの時よりも彼女の顔色は悪く見える。 「どうかしましたか?」 「こ、これ……」 玲子は蒼白の顔面を真冬に向けて、その用紙を差し出した。 それは、駅で流れた陽気なDJによる放送の内容を裏付ける、この街を支配しているルールの説明書きだった。 何気無しに裏面を見れば、そこには『呼ばれし者』と表題のつけられた名簿も記載されている。 これが、この街に迷い込み、殺し合いを強要されている人間の名前なのだろうか。 福沢玲子、ジェイムス・サンダーランドの名前もその中には確かにある。 そのまま視線を下げていけば、用紙の下部には自分の名前も見つかった。更に――――。 「深紅……!?」 心臓を鷲掴みにされたかのような驚愕と共に眼に飛び込んできたのは、その隣にある『雛咲深紅』の文字。妹の名前だった。 真冬は言葉を失った。深紅までもがこの世界に囚われてしまったというのか。一体、何故。 自分はともかくとしても、あの大人しい妹がこんな場所で裁かれるような罪を犯しているとはどうしても思えない。 「ミクって……誰なんですか?」 「……僕の、妹です。どうやら僕達と同じ様に、この街に迷い込んでしまったようですね。 ところで福沢さん。この用紙は、どこに?」 「んーと……バッグの中なんです。ペットボトルでも無いかと思って探してたんですけど……」 「バッグの中? 貴女のそのバッグの中ですか?」 「あ、これ私のじゃないんです。説明すると長くなっちゃうんだけど――――」 そう前置きして、玲子はこの世界に入り込んだきっかけと、これまでの経緯を簡潔に語り始めた。 彼女は放課後の水泳部部室でロッカーに引きずり込まれ、気付けばこの街のあるアパートにいたらしい。 バッグはその時に側に落ちていたものだという。つまりは、この街で用意された物。名簿が何かの間違いという可能性は少ないようだ。 となれば、深紅もまたこの世界に迷い込んでいる。それは事実として受け入れなければならないという事か。 無意識に、真冬は悲痛で顔を歪めていた。そんな彼を気遣ったのか、いつの間にか玲子は話を止めて気まずそうな表情を真冬に向けていた。 「ああ、すみません。……ついでに続きもお願いします」 深紅の事はとりあえず置いておくしかない。真冬は無理に笑顔を作り、話の先を促す。 迷いながらも再開された玲子の回想は、そのアパートで荒井という学校の先輩に再会し、少しの間だが一緒に行動していた事、 そして、その荒井も怪物に殺され、街をさ迷っている時に真冬と出会ったのだという事までを話して終わった。 「アライ……アライ?」 名簿を見返しながら話を聞いていた真冬は、一つだけ違和感を覚えた。 玲子がしばらくの間一緒に行動していたという『荒井昭二』。彼の話についてだ。何度名簿を見返してみても、その中に荒井の名は見当たらなかったのだ。 「すみません、荒井君というのは――――」 真冬は率直に疑問を口にしようとした。しかし、その問いかけは――――家内の何処からか聞こえてきた金属音によって遮られた。 ガン、と何かを叩くような重く、鈍い金属音。それが、ダイニングまで響いてきたのだ。 思わず口を閉ざし、二人は耳を済ませた。 音は、一度では終わらない。ガン、ガン、と。重い金属同士が忙しなくぶつかり合うような鈍い音が、止む事なく響き始めていた。 「何なんですか、あの音……」 抑えた声だが、堪えきれない不安を玲子が吐き出した。 そう問われても真冬にも音の正体の見当は付かない。 答えて安心させてやりたいのは山々なのだが――――。 「話の続きは後にしましょう。ちょっと、見てきます。 ……福沢さんは念の為にいつでも逃げられる準備をしておいて下さい」 「逃げるって……そ、外に!?」 玲子が窓の外に怯えの色を浮かべた目を向ける。 確かに外には異形の怪物が徘徊している。真冬が玲子に出会う前には、付近からは激しい銃声も聞こえてきていた。 出来る事なら家の中に篭っていたいと、そう願う気持ちは理解出来るが、それを状況が許してくれるのか。 「もしもの場合は、です。何でもなければそれで良いんですから。 ……とにかく確認してきます。ここを動かないで」 血に濡れた鉄パイプと、氷室邸を探索する際に使うつもりだった懐中電灯を躊躇いがちに握ると、真冬はダイニングのドアを開いた。 金属音が若干大きくなる。それ以外の音は、今は何も聞こえない。 殆ど視界の利かない暗闇の廊下に懐中電灯の明かりを差し込むと、汚れと錆で飾り立てられた世界が浮かび上がった。 左右に光を巡らす。とりあえず見える範囲に異常はない。 身体を廊下に出し、落ち着かない様子で見送る玲子に頷きかけると、真冬は静かにドアを閉めた。 耳を澄ませ、金属音の確認をする。音の鳴る方向は玄関側ではなく、家内の奥のようだ。 明かりを廊下に向け、慎重に1歩を踏み出した。極力気配を殺そうとする真冬を嘲笑うかのように、足元の床板がギィッと軋んだ。 予想外の物音にハッと視線を落とし足を止めるが、鳴り続けている金属音は別段に変化を見せなかった。 音は一定間隔で鳴っている訳ではないが、数秒以上の間を開ける事もなく。ただ不規則に、ひたすらに、鳴り続けている。 前を向き直し、歩みを再開する。床板を軋ませながら一歩ずつ近づいていく。近付くに連れ、音は大きくなる。 鉄パイプを握り締める手に、高まる緊張で強張る顔に、冷たい汗が滲んでいた。 と、真冬の動かした円形の明かりが、数m先の左手のドアを照らし出した。 手前と、奥。ドアは2つある。その幅は、約3~4mと言ったところか。 真冬は手前のドア付近まで進み、耳に意識を集中させた。 金属音はドア側の壁の向こう――――ドアとドアの中間程の位置から響いて来る様だ。 つまりは、恐らくこのどちらかのドアの向こう側という事なのだろうが、どちらが正解なのか。そこまでの判別はつけられそうにない。 暫し、逡巡。薄汚れた2つのドアを、迷いの混じった明かりと視線が行き来する。 数秒の後、真冬は手前のドアを開く事に決めた。判別出来ないなら、近い方からだ。 鉄パイプと懐中電灯を一纏めにして右手で逆手に持ち、錆び付いたドアノブを左手で掴んだ。 ノブを捻り、ドアを押す。やはり錆び付いていた蝶番が音を立てた。ドアに若干の重さを感じるが、それも錆のせいか。 半分程ドアを開くと、中から独特の悪臭が漂ってきた。ここはどうやらトイレだった様だ。 怪物の類が飛び出してくる事にも注意を払っていたが、その様子もない。そのまま慎重にドアを開いていく。すると――。 「はっ……!」 真冬は目を見開いた。個室内に居たのは、男子学生の死体だった。 壊れているのか、水が溜まってもいない便器。それに顔を突っ込むかの様に男子学生の死体が伏している。 いや、正確には『男子学生らしき者の死体』だ。その死体が本当に男性であるのか、まだ真冬には分からない。 死体は、白骨化していたのだから。男子学生だと推測出来るのは、骸骨が纏っている男性用の制服のおかげだ。 そのズボンとシャツは骸骨の骨格と比べてやや大きめに映った。 それがこの人物の物だと素直に受け取るのなら、彼は少々肥満体だったのかもしれない。 (彼も犠牲者なのだろうか……?) 金属音はやはり変わらず鳴り続けていた。 懐中電灯を左手に戻し、トイレの隅々に光を入れる。死体以外には特に異常はない。音が鳴る様な物も無い。要するにこちらは外れだ。 ただ、一つだけ気になる物があった。骸骨の側の床に黒っぽい小さな手帳が落ちているのだ。 死体には若干の恐怖は感じているが、それでも、真っ二つに捌かれていたジェイムスの死体を見た時程の衝撃はない。 異を決して、真冬は手帳に近寄った。手帳には所々血液が付着していた。 ゆっくりと手を伸ばし、そして、それに触れる。 ――――――――頭の中に、残留思念が流れこんできた。 白と黒。単色で描き出された誰かの思念。 そこは、どこかのトイレの様だ。個室しかないところを見ると女子トイレか。 三人の学生が居る。一人はやや肥満体の少年。一人は幼さの残る少年。 そしてもう一人は、奇妙な白い仮面を被っている女生徒だ。 肥満体の少年は、驚くべき事にトイレの天井に張り付くように浮かんでいた。 『嫌だ! 嫌だよ! 助けてくれよっ!』 肥満体の少年が天井に吸い込まれていく。まるで水の中に沈む様に。 『うわあーーーーーーっ!』 絶叫を残し、肥満体の少年の姿は天井に飲み込まれた。 幼さの残る少年は、唖然として天井を見上げていた。 彼は怯える小動物の様に、震えながら、ゆっくりと、視線を天井から外して仮面の少女へと動かしていく。 少年と少女の視線が混じり合い、そして――――。 そこで、残留思念は途切れた。 左手の中に何かの感触がある。視線を落とせば、そこにはいつの間にか手帳が握られていた。 「鳴神学園……。細田、友晴……?」 それは、高校の生徒手帳だった。 鳴神学園。そこは玲子の通っているという高校のはずだ。そう言えば仮面を被っていた少女は玲子と同じ制服を着ていた。 しかし、細田友晴。その名前には心当たりがない。記憶を辿ってみても、名簿には記載されていなかったように思う。 最初のページを捲ると、手帳の所持者の顔写真が貼り付けられていた。 その顔は見間違えようもない。残留思念の中で天井に飲み込まれて消えたあの肥満体の少年だ。 真冬は骸骨に目を向ける。やはりこの死体が彼なのだろう。 ならば、この細田友晴もジェイムスと同様だという事だろうか。 天井に飲み込まれた後、何らかの罪を償わせられる為にこの街に呼ばれ、裁かれたという事なのだろうか。 しかしそれならそれで疑問が生じる。何故彼はジェイムスや自分と違い名簿に名前が載っていない。何故彼がここで死んだ時の残留思念が残っていない。 或いは死体だけがこの世界にやってきたのか。それは何の為に。どんな理由で。いや、意味などは無いのかもしれないが。 この細田友晴に話を聞ければ何かしらの答えが出るのかもしれないが、残念ながらその魂の気配も付近には感じられなかった。 仕方がない、と真冬は小さく頭を振り、纏まらない思索を打ち切った。 考えていても答えは出ないし、今はそれよりもする事がある。 壁の向こうからは今も金属音が続いている。現時点ではその確認をして安全を確保する事が最優先だ。 細田友晴の事は気になるが、名簿に載っていない人物でこの世界に来ていたのは彼だけではない。先程玲子が話していた荒井も同じだ。 機会を見つけ、荒井という少年の所に行ってみよう。 この世界で死んだのか、死んでからこの世界に来たのかが分からない細田と違い、荒井ならば死んで間もないのは確かだ。まだ霊魂が死体の側にいる可能性は高い。 もし話せれば、細田友晴の事も含めて何かが分かるかもしれない。 トイレから出ようと、真冬が骸骨に背を向けて廊下に戻ろうとした時だった。背後で、カサリ、と気配がした。 ハッと身体を返し、懐中電灯を向ける。便器の中を覗き込んでいた頭蓋が、黒く大きな目でこちらを見つめていた。 いや、見つめていただけではない。頭蓋は小刻みに動き、僅かながら便座から持ち上がったではないか。 まさか。 冷静になろうと努めるが、動揺は隠しきれない。 息を呑み、後退りをした。まさか、こんなものまで襲ってくるというのか。 真冬の恐れが胸中で膨らみかけた次の瞬間――――頭蓋と便座の間から黒い物体が姿を覗かせた。 「これ、は……!?」 その物体は、虫だった。それも、相当に大きい。15、いや20cmはありそうだ。 信じられない大きさだが、形状から判断すればその虫は、ゴキブリだ。それ以外の何物でもない。 そいつは一旦動きを止め、何かを探る様に二本の触覚を円を描くように動かしている。どこに目があるのかは良く知らないが、真冬をじっと見据えている様な気がした。 頭蓋が動いていたのは、便器の中からこの虫に押されていたせいか。 ゴキブリが動き出した。便器を伝い降り、真っ直ぐに真冬へと向かってくる。持ち上げられた頭蓋はゴキブリが通り過ぎた後は、軽い音を立てて便器にぶつかり動かなくなった。 特別に虫が苦手という意識は無いのだが、流石にこの悍しさには真冬も身を震わせた。 慌ててドアノブを掴み、勢い良くドアを閉める。内側から、ドアに激突する音が響いた。 2度。3度。ドアに衝撃が走る。巨大ゴキブリが体当たりを繰り返している。 有り得ない。あれ程に巨大化している事もそうだが、ゴキブリが人に向かってくるなど有り得るはずがない。 ――――いや、この世界はそもそもが異常。ここにいる生物を常識で測ろうとしても無意味なのかもしれないが。 衝撃が、止んだ。諦めたのだろうか。真冬はホッと息を吐き、肩の力を抜く。 直後、一際大きな金属音と、続けて何かが落下して床を叩く鈍い音が響いた。隣の部屋だ。 それを堺に鳴り続けていた金属音は一切しなくなる。部屋で何か変化が起きたらしい。 真冬は奥側のドアを見据えた。音の正体は、もう間もなく判明する。 奥のドアの前に立ち、先程と同じ要領で鉄パイプと懐中電灯を握り直し、赤錆まみれのドアノブをそっと捻った。 唾を飲み込み、ドアを押す。何かが蠢く気配が部屋から漏れ出した。確実に、何かがいる。 開け放したドアから、真冬は数歩離れた。鉄パイプを構えてしばらく待つが何も出てこない。気配は今もしているというのに。 廊下から室内を照らす。浮かび上がった部屋の様相は、脱衣場のそれ。 半身だけ身体を室内に入れ、隅からゆっくりと光を動かしていく。果たして、蠢く音の正体は――――見えた。 脱衣場の更に奥。曇りガラスに仕切られたそこは、浴室だろう。 その曇りガラスに浴室側から張り付き蠢いている黒い影は、見間違えようもない。トイレにいたのと同じ種類の巨大ゴキブリだ。張り付いているのだけでも4、5匹はいる。 1つの黒い影が浴室内を走り、バンッと曇りガラスに突進してきた。ガラスに張り付いていた連中が衝撃で落下していく。 反射的に床に光を向け、そして真冬は気付いた。黒い影が浴室内の1点から続々と出てきている事に。 あの1点――――あれは、排水口だ。 金属音は、ゴキブリ達が排水口から這い出て来る為に排水筒と排水目皿を破る際の音だったのだ。 (虫が金属を破壊する……馬鹿な) 否定はしてみるものの、それしか考えられなかった。信じ難い事ではあるのだが、他に音の正体らしきものはない。 ガラスに激突した1匹を皮切りに、他の個体も突進を始めていた。走ってくる個体。飛びかかってくる個体。次々と加えられる衝撃が脱衣場内の空気を震わせる。 加減をする気は全くないのか、ガラスに激突してそのまま潰れる個体もあった。白い体液と黒い残骸が曇りガラスに飛び散り、こびりついていく。 そんな姿になる仲間に構おうともせず、そんな姿になる事を躊躇おうともせず、ゴキブリ達は激突を止めようとはしない。何匹も、何匹も、曇りガラスにぶつかっては潰れていく。 何故そうまでして向かって来るのか――――真冬がそう疑問に思うと同時にフラッシュバックしたのは、トイレの少年の白骨化していた姿だった。 (白骨……まさか、このゴキブリは人を食べる……のか?) 何故細田少年がこの世界にいるのか今はまだ分からないが、虫に食われた、とそう考えればあの無残な姿の説明だけはつけられる。 この虫達は今、テリトリー内に餌が入ってきた事に喜び、餌にありつこうとする一心でガラスをも破ろうとしているのだ。 浴室内の様子は最早伺う事が出来ない程に、曇りガラス一面が白と黒で染まっていた。だが、今も虫達が排水口から這い出し続けているであろう事は想像出来る。 曇りガラスに何度目かも分からない衝撃が走った。真冬の耳が、ピシリと、亀裂の入る音を捉えた。 ガラス――――ではない。ガラスよりも先に悲鳴を上げたのは下方の蝶番だった。 一瞬の戸惑いの後、真冬は理解する。 原因は、赤錆だ。赤錆で蝶番が腐り、強度が脆くなっているのだ。排水口が破られたのも恐らくはそのせいか。 次の衝撃で、亀裂の入った蝶番が弾け飛んだ。同様にドアの下部が弾かれ、一瞬だけ開いた隙間から1匹が姿を覗かせた。 隙間から這い出ようとしたその個体は、反動で戻ったドアを潜り切れず、半身を潰されて体液を辺りに撒き散らした。 そこまでを見知って、真冬は大きな音を立てながら脱衣場のドアを閉め、急いで廊下を戻った。 あの曇りガラスが破壊されるのは時間の問題だ。脱衣場やダイニングのドアの蝶番もあの大群の総攻撃を受ければやはり破壊は免れないだろう。 このままこの家にいては、いずれあいつらに押し包まれる。一刻も早く別の場所へ逃げなくては。 「福沢さん!」 ダイニングに飛び込むと、玲子が真冬の剣幕に驚いたように目を丸くした。 荷物は握り締めている。真冬に言われた通り、逃げる準備はしていてくれたようだ。 「ど、どうなっちゃったんですか真冬さん? 何か音が大きくなってません?」 「説明は後でします。とにかくこの家を出ましょう!」 「え? え? え? な、何があったの?」 「いいから、早く!」 真冬は福沢の手を取り、ダイニングを出て玄関に向かう。 ガラスドアが倒れて砕ける耳障りな音と振動を背中に受け、二人は家から飛び出した。 【C-5/路上/一日目夜中】 【雛咲真冬@零~ZERO~】 [状態]:脇腹に軽度の銃創(処置済み→無し)、未知の世界への恐れと脱出への強い決意 [装備]:鉄パイプ@サイレントヒルシリーズ [道具]:メモ帳、射影機@零~ZERO~、クリーチャー詳細付き雑誌@オリジナル、 細田友晴の生徒手帳、ショルダーバッグ(中身不明)、懐中電灯 [思考・状況] 基本行動方針:サイレントヒルから脱出する 0:とにかく場所を変えなくては 1:名簿には名前の無かった荒井の霊魂に話を聞いてみたい 2:福沢からもう少し詳しく話を聞く 3:この世界は一体? 4:深紅を含め、他にも街で生きている人がいないか探す 【福沢玲子@学校であった怖い話】 [状態]:深い悲しみ、固い決意 [装備]:ハンドガン(10/10発) [道具]:ハンドガンの弾(9発)、女子水泳部のバッグ(中身不明)、名簿とルールの書かれた紙 [思考・状況] 基本行動方針:荒井の敵を撃ち出来るだけ多くの人と脱出する 0 真冬さんについていく 1 真冬と情報交換をする 2 人を見つけたら脱出に協力する。危ない人だったら逃げる ※荒井からパラレルワールド説を聞きました ※荒井は死んだと思っています 【クリーチャ基本設定】 ラージ・ローチ 出展:バイオハザード2 形態:複数存在 外見:巨大化したゴキブリ 武器:歯 能力:ゴキブリ。通常のゴキブリよりも凶暴で怪力。1匹1匹の力は然程でもないが群れで行動すれば腐った金属くらいなら破壊できる。 攻撃力:個体による 生命力:個体による 敏捷性:個体による 行動パターン:他の生物を捕食する為に、生物の気配を感知すれば襲いかかってくる。基本的には下水道に生息。 備考:サイズは個体によって様々であり、20cm~40cm程。攻撃力、生命力、敏捷性もその大きさで変化する。 back 目次へ next せめて一度くらい、幸せな夢を見させて 時系列順・目次 Unknown Kingdom Dog Soldiers 投下順・目次 風海純也の考察物語 back キャラ追跡表 next 猫歩肪当(猫も歩けば棒に当る) 福沢玲子 さらに深い闇へ 猫歩肪当(猫も歩けば棒に当る) 雛咲真冬 さらに深い闇へ
https://w.atwiki.jp/deruze/pages/413.html
Dog Soldiers 飛び出した鉛弾が標的に喰らい付く。ズタズタになったポンチョコートに抱きすくめられるように、感染者が床に崩れ落ちる。 その亡骸を飛び越え、五匹の犬の顎が迫る。充分に引き付けてから、指に力をこめる。閃光の中、か細い悲鳴が銃声の中に消えた。 硝煙の向こうに、複数の物言わぬ肉塊が重なり合っている。耳障りな呻き声はもう聞こえない。 マシンピストルを降ろし、ハンクは踵を返した。これで、この区画に居た感染者は全て排除したはずだ。空になった弾倉を手早く交換する。 遭遇した二人の男女から情報を聞き出すため、手近なオフィスビルに入ったのだが、この建物にも複数の感染者が当然のように侵入していた。 己一人であるなら無視しても構わない存在だが、今は彼女らの安全を確保せねばならなかった。少なくとも、彼が必要とする情報を持っているかどうかの確認が取れるまでは。 この消費は後々響いてくるかもしれないが、必要経費だとも言える。 サイレントヒル――別行動を取る前に男から聞きだした町の名前だが、心当たりは全くなかった。分かるのはナイト・ホークが待機している可能性が殆どないということだけだ。 ただし、この町に、アンブレラ社に関連する何らかの施設があることは確かだろう。ラクーンシティよりも規模は小さいようだが、ウィルスの漏洩事故が発生しているのだから。 もっとも、己がアンブレラ社の持つ研究施設の所在を全て把握しているわけではない。それどころか、ほんの一握りだ。 雇い主にとって、己は利用価値のある猟犬に過ぎない。猟犬は己の分を弁えているものだ。過信せず、目にみえる事象のみを追いかけていればいい。 知る必要のないものを知ろうとしないことだ。それだけで多少は長生きできる。 問題は、己自身に何の情報も与えられていないことだ。最初に思い至ったのは任務の変更だが、その報せもない。必要最低限の情報すら与えられないことは珍しくもないが、何もないという状況は初めてだ。 何より、新種のウィルスのサンプルはまだハンクの手にある。その回収よりも優先される任務で、且つ何の情報も与えられないものとなると想像することも難しい。 扉を前にしてノックを二つし、かつては事務所だったらしい部屋に入る。 乱れたデスクの列は、町を覆った混乱の爪痕を如実に表していた。観葉植物を備えた室内は合理性と快適さを兼ね備えた構成になっており、職員への細かい心配りが想像できた。 しかし、今は、フロアタイルには赤黒い汚泥がこびり付き、デスクの上には血糊のような物が広がっている。 男は一番手前の席に腰掛け、女はその横に立っていた。女は机上に広がる物体を調べていたようだ。ハンカチで指先を拭っていた。 両者とも戻ってきたハンクへと顔を向けている。 「一通り片付けてきた。質問に答えてもらえますかな? ミスター……」 「カートランドだ。ダグラス・カートランド。彼女は式部人見。あんたは?」 「ハンクと呼ばれています。ミスター・カートランド。サイレントヒルと言われましたが、残念ながら私の記憶にはない町のようだ。どの辺りにある町ですか?」 問いに、カートランドは所属する州や近隣の町の名前を答えた。サイレントヒルは合衆国の北東部にある町のようだ。ラクーンシティが中西部の都市だから、相当の距離を移動していることになる。 観光地とのことだが、こうまで汚染された後では余程の物好きしか集まらないだろう。汚染の程度はどうあれ、町の命は既にカウントダウンに入っている。 通りを闊歩する腐った感染者たちは、その状況に何の痛痒も感じないだろうが。 そのことを哀れと思わないでもないが、いつか終わりと言うものは来るのだ。この町が他の町よりも僅かばかり運が足りなかっただけだ。 気づかれないよう、ハンクはため息をついた。 まず為すべきは、アンブレラ社と連絡を取ることだ。しかし、既存の通信機器がまともに使えることを期待するのも無駄だろう。 アンブレラ社の弄した策によって外部との通信手段は遮断されていると考えていい。無線が故障している以上、町からの脱出が当面の目標になる。 説明を終えて、カートランドが探るように下からハンクを仰ぎ見た。 「あんた、そんな格好をしているが、軍人か何かか? バードウォッチングが趣味ってわけじゃないだろう?」 「傭兵ですよ。この装備は雇い主持ちです」 「……成る程」 当たり障りのない嘘を告げる。カートランドは嘘に勘付いたかもしれないが、その追求をさせる間もなく問いを重ねる。 「ご説明、感謝します。情けない話ですが、迷子状態でね。一番近い町の出口を教えて貰えると助かるのですが」 「……一番近いのは、このビルが面している通りを東か西へ抜けることだろうな」 カートランドは歯切れ悪く告げた。己の言葉を疑っている。そのような雰囲気だ。 式部が肩を竦めたのが、衣擦れの音で分かった。 「彼の情報も当てにならない。そういうことよ」 「というと?」 「これ、外の掲示板で見つけた地図なんだけど、どうも彼の記憶や所持していた地図とは違うようね」 「……見せてもらってもよろしいかな? ミセス・シキブ」 「まだ独身よ。どうぞ」 「それは失礼」 彼女に近寄り、地図を受け取る。ハンクはマスクを外し、直に地図を見た。直に吸う空気は生臭さが漂っており、気分がいいものとはいえない。 そこには湖を中心に置いた町の概要が描かれていた。今懐の中に入っている地図と同一のもののようだ。風変わりなテーブルクロスだと踏んでいたのだが違ったらしい。 遊園地や病院、警察署といった公共的なものから、個人の宅地まで記載されている。ただし、後者で載っているものは極一部だ。 観光地であることを鑑みると、地元の名士の生家か何かなのだろう。 現在位置をカートランドが告げる。確かに湖沿いに東西へと抜ける道が描かれている。しかし、南へ抜けるルートの方が若干距離が短いように見えた。 「具体的にはどう違っているんです?」 「殆どさ。今居るビルの正面にあるローズウォーターパーク――その地図では単に公園と書かれているが、そこの対岸にはレイクビューホテルとレイクサイドアミューズメントパークがあったはずだった。しかし、この地図には描かれていない。代わりに北岸には町が広がっている。ホテルと遊園地は湖の東岸と西岸にそれぞれ移動しているようだ。それに加えて、トルーカ湖が随分と小さくなっているように思う。これは縮尺が分からないから、なんとも言えないがね」 序でに二人の容貌を確認する。 カートランドは頭に白い物が混じり始めた初老の男だ。好々爺然とした風貌だが、どこか厭世的な空気を纏っている。着崩れたステンカラーコートが、その印象に拍車を掛けていた。年齢の割りに体格もよく、軍か警察に籍を置いているのかもしれない。 式部は東洋人の女だった。最低限の化粧しか施されていない面は、そのせいでより元の整った容貌を際立たせているように思える。切れ長の瞳は知性と、そして我の強さを如実に表していた。 再び地図に視線を戻す。 描かれている施設で目に留まったのは研究所だ。おそらくはアンブレラ社のものだろう。専用の通信機器がまだ生きている可能性はある。ただし、ラクーンシティに倣うならば、ウィルス漏洩事故の中心地でもあるのだ。 装備が充実しているならまだしも、今の状態で向かうのは得策ではない。縦しんば繋ぎが取れたとしても、そこから脱出するのは至難の業だ。自信がないわけではないが、わざわざリスクを冒す必要はない。 ハンクは地図から視線を上げた。 「そこまでとなると、そのサイレントヒルですらないかもしれませんね。しかし……奇妙な地図だ。具体的名称が一つも無い」 「まるで子供が書いたみたいに曖昧な代物よ。最悪、どれもこれもが間違っているかもしれない」 「そうかもな。南へのルートは?」 「道が無くなっているのよ」 式部が苛立たしげに答えた。 「無くなっている?」 「そう。私たちがこの町に入った道は崩落していたわ。道だけじゃなく、大地そのものが絶壁に変わっていた。ほんの少し、目を放した隙にね。頭がおかしくなったと思うでしょうけど」 そう式部は自嘲した。彼女もまた、己の言葉を信じられないでいるようだ。 小さい嘘か、とんでもない大法螺を吹くかが人を騙すためのコツと言うが、少なくとも彼女の様子から嘘を見抜くことは出来なかった。 「あまりに突拍子もないせいで、むしろ信じる気になりましたよ。要は、逃走経路は二通りしかないというわけだ。太陽が昇る場所か、もしくは沈む場所か――」 「こんな事態なのに落ち着いているんだな」 ぼそりとカートランドが呟いた。 「こういったものには多少慣れていますから」 「迷子にか? それとも化け物や死体が動き回る事態にかね?」 射抜くような眼光が向けられる。身体は衰えてきているのだろうが、瞳には年齢を感じさせない強さがあった。 「そんなに私の経歴が気になりますか? どのような返答をお望みで?」 「……すまない。職業病だ。どうにも、嗅ぎ回ることから離れられない性質でね」 カートランドは苦笑を浮かべた。しかし、それでも彼は探りを入れようとしたようだが、その機先を式部の言葉が制する。 「それは的を射た表現じゃないわね。死体は歩いたりしない。死後に筋肉が緩んで痙攣したり、腐敗の進行によって動いたりすることはあってもね。歩き回っている以上、あれは生きた人間のはずよ。ハンセン病のような、悪性の感染症かもしれない」 「……言葉のあやだ。見たままを言ったまでだよ」 「それが間違いになるのよ。言葉にすることで、より一層誤った認識が自分の中で固まってしまう。知らず知らずのうちにね。そんな曇った眼で真実を見通すことなど不可能よ」 カートランドにぶつけられる式部の言葉には怒りすら感じられた。死体が歩いたところで別に構わないだろうが、彼女にとっては大きな問題らしい。何が何でも認めるわけにいかない。癇癪めいた雰囲気が、彼女の言葉の端端に窺えた。 人間は常に、自分に理解できない事柄はなんでも否定したがるものであるというパスカルの言葉は正しかったわけだ。 彼女は科学者なのかもしれないが、その姿は自らの教義を押し通そうとする宗教家の姿と似通っていた。 科学は進歩するが、人間は変わらない。 そんな言葉も頭をよぎる。カートランドのうんざりとした表情が見えた。 式部は一拍置くと、くるりとハンクに向き直った。 「あなたは知っているの? 彼らの正体を」 カートランドとは違う、鋭利な刃物を思わせる眼差しだ。鋭く、脆い――そんな印象を覚える。 ハンクはマスクの裏で苦笑した。言葉に気をつけて答えなければならない。彼女を支持するにしろしないにしろ、余計な時間をとられかねない。彼女との無意味な討論も楽しそうだが、今はそのときではない。 式部に地図を返しながら、ハンクは大仰に肩をすくめて見せた。 「撃てば、死ぬ。知っているのはそれぐらいですよ」 「随分とシンプルなのね」 「だが、一番重要なことだと思いますね。それさえ分かれば、人間か否か、わざわざ区別する必要はない」 「素敵な平等主義だことで。人も"化け物"も、あなたにとっては同じ?」 皮肉げな式部の言葉を、ハンクは身振りではぐらかした。どうやら、彼女のお気に召す答えではなかったようだ。 だが、事実は事実だ。懸命に意識し続けなければ、今このときも目の前に居る彼らと化け物の区別はつかなくなってしまうだろう。 正直なところ、必要な情報を持っていないことを知った今、カートランドたちを撃たない理由は何処にもないのだ。ただ、銃弾二発分の価値が彼らに勝っているだけに過ぎない。 そもそもが武器を持った素人と玄人とを比べるようなものだ。どちらも危険には変わりない。引いては、同じく排除の対象ということだ。 リスクを無くすために得物の選り好みをしないのと同じだ。使える物でありさえすれば、望む結果を導くことが出来る。 ふと思いついて、式部に付け加える。 「……ひょっとするとなんだが――もしかしたら、叩いたり潰したり燃やしたり磨り潰したり削ったりすることにも弱いかもしれない。そうすると弱点ばかりだな」 「………………。そうかもね」 今度は彼女の期待する答えを提供できたようだ。その結果に満足し、ハンクはマスクを被り直した。もう彼らと会話の必要はない。 式部は疲れたように吐息をついて、カートランドに視線を向ける。 「この地図にもモーテルはあるわ。まずはそこでヘザーを探して見ましょう。その後は病院ね」 「異論はないよ……」 カートランドが立ち上がり、部屋を出て行く。ハンクも彼らに続いた。 薄暗い通路の途中で彼らを追い越し、白い格式ばった扉を開ける。 瞬間、骨の髄まで痺れるような感触が奔る。無意識にハンクは膝の力を抜いて、ポーチ床の上に身を伏せた。刹那、連続した銃声が闇を貫いた。ハンクに続いて出ようとしたカートランドの身体が小刻みに跳ねる。式部がカートランドの名を叫んだのが聞こえた。前のめりに倒れこむ彼とすれ違う形で、ハンクは転がるようにオフィスビルの中に戻る。 ほんの一呼吸間を置いて、雨の様な掃射が玄関口を襲った。その躍るように軽やかな咆哮に、外壁と扉が耳障りな悲鳴を上げる。 式部はハンクから一ヤードほど離れた壁に背を預けて座り込んでいる。存外に落ち着いているが、それはパニック寸前の静けさのように見えた。 「……ここからじゃ無理そうね。扉ももう保たないんじゃない?」 「そうだな。一瞬でも気をそらすことが出来れば仕留めるチャンスも出来るがな。奇抜であればあるほど効果が高い」 「私に素っ裸になって踊れとでも言う気?」 僅かに見える閃光に向かって、マシンピストルの引き金を引く。相手の銃撃は些か自己主張が激しすぎる。最初の銃撃は、正確にハンクの身体があった空間を射抜いていた。間違いなく、敵はこの暗闇の中でハンクを捕捉している。その一方で、ハンクは相手の姿を捉えられていなかった。あの時であれば、仕切り直しは可能だったはずだ。アドバンテージは相手にあったのだから。 にも関わらず、敵はこれでもかと己の所在を示してくる。 つまりは――囮だ。 マシンピストルの弾倉を入れ替えた後、ハンクは左手で拳銃を引き抜いた。マシンピストルでの牽制を続けながら、次に起こり得る状況を思い描く。 「……もう少し若くないと」 冷たい夜気の流れ込む屋内の空気が質量を持ったかのように一気に張り詰める。カシンと音を立ててマシンピストルの動きが止まった。 「後ろよ!」 裏の倉庫から侵入したのだろう。足音もなく接近する白い人影に向けてハンクは拳銃を発砲した。 純白の火花が咲き、先頭の影が翻筋斗打って倒れる。その背後から現れるサブマシンガンの銃口――それに向かって用無しとなったマシンピストルを投げつける。同時にハンクは床を蹴った。放られたマシンピストルに射線を遮られ、相手の行動が一呼吸遅れる。その一呼吸の間にハンクは襲撃者の懐にまで踏み込んだ。 相手の動作が致命的なまでに緩慢に映った。一瞬一瞬の出来事が己の命を摘み取ろうと迫ってくる。それを振り切るために、意識は何処までも澄み、冴え渡っていた。 再び構え直された銃身を右手で跳ね上げ、その首に拳銃を引っ掛ける。相手の抵抗に合わせて、身体をひねった。己の気勢の息吹が他者のもののように鼓膜を震わせる。相手の腕に触れながら足を蹴り払い、すれ違いざまに体勢を崩した襲撃者の背後を取った。 銃声が響き、襲撃者の体越しに振動が伝わる。案の定、囮役がこの間に距離を詰めて来ていたのだ。腰を落とし、襲撃者を盾とする。容赦のない銃撃に肉の盾が爆ぜて行く。力なく揺れる腕の隙間から、玄関口に現れた二つの人影に向けて引き金を引いた。 銃弾が肉を食い破った音を耳が拾う。甲高い悲鳴を上げて二人は絶息した。 更なる襲撃がないことを確認してから、まだ息のあった襲撃者の元にまで戻り、ハンクはその喉を踏み砕いて止めを刺した。 ハンクと式部を除いて、この空間で動くものはない。 仕留めた獲物を確認する。襲撃者たちはハンクと瓜二つの恰好をしていた。間違いなく"U.S.S."の隊員だ。彼らが身に着けた防弾ベストにはどれも醜い爪痕が刻まれている。戦闘の末に負ったものだろうが、防弾ベストの役目が失われるほどの大きさと深さだ。これで命に届かなかったのだから、余程このチームはついていたと見える。 敢えてこちらを狙ってきたことから察するに、彼らは生存者の抹殺指令でも受けていたのだろう。問題は、同胞にまで銃口を向けてきたことだが――。 ふと、彼らがこちらの正体に気づく時間も満足に与えられなかったことに気付く。 結局、彼らの運はそこで尽きていたのだ。 幸運は続かない。一度は防弾ベストに救われたのかもしれないが、二度目はなかった。単にその程度のことだ。 ブーツが床を叩く硬音。その足音に振り返ると、一度出て行った式部が戻ってきていた。彼女は沈んだ声でカートランドの死を告げた。 式部の息は上がっていた。どうやらカートランドの死体を、せめて中に入れてやろうとしたようだ。結果は無駄な努力に終わったようだが。 死体はもう肉の塊でしかないというのに、感傷的な女だ。 式部はハンクの足元の死体に目を向けた。 「……お知り合い?」 「なんだろうが、知らないな」 ふと興味が湧き、足元の死体からマスクを剥ぎ取る。黒髪の壮年が、精気のない目を見開いていた。フェイスペイントでも施したのか、塗料か何かの汚れが目元や口元にこびり付いているのが分かる。 やはり見覚えはない。そのはずだ。誰一人とて憶えてすらいなかったのだから。 すぐに興味を無くし、ハンクは襲撃者のサブマンシンガンに目を向けた。装着された弾倉に弾はまだ十分に残っていた。無線機を調べると、弾丸が貫いていて使い物にならない。物の管理が出来ていない男だったようだ。 がらくたになった無線機を放り、他の死体に足を向ける。 「……この死体、おかしいわ。死んで大分経ったみたいに冷たい」 式部はマスクを剥ぎ取った死体を調べていた。 「ならば、死体が動いていたんだろう」 死体から当面必要な分の弾倉を抜いておく。無線機には無事なものもあったが、今所持しているものと同じように故障しているようだ。それまで続いていた衣擦れの音が音が途絶えた。 式部を見やると、彼女は手を止めている。どこか、その姿には深い慙愧が感じられた。 「……それは認められない。監察医としてね。これまでの真実が何の意味もなさなくなってしまう。私の友人は喜びそうだけど」 「なるほど……上手くできた関係だ」 「何が……?」 「死体で喜ぶんだ。その友人は死体愛好家だと分かる。監察医ならば、身元不明の死体を横流すのも容易だろうからな。見事な泥沼の絆だ」 「……もう、それでいいわ」 なぜか急に疲れた様子の式部から目を外し、ハンクは拳銃の弾倉を入れ替えた。 これまでの銃声で離れていた感染者たちも寄ってくるだろう。長居は無用だ。襲撃者の死体の一つを担いで、半開きの扉に手をかける。 「では、お元気で。ミス・シキブ」 「モーテルまで護衛してくれるつもりはないわけね」 「私はもう二回も、護衛対象ですらない君の命を救っている。これまでしたことがないくらいのサービス精神だ。今の私なら街に出て無闇矢鱈と犬に吼えられることもないと確信する」 「私もあなたの命を救ったわ。彼らの接近を報せた」 「言われなくとも気づいていた」 どうかしらと、式部は微笑した。ハンクはため息をついた。 「君と一緒に行くつもりはない。その方が良い結果になる」 「……嫌われたものね」 式部が小さく唇をゆがめて髪を掻き揚げた。彼女はハンクの言葉を嫌味と受け取ったようだが、それは本心だった。 己と彼女の住まう世界は似て非なる。いわば、人と獣のようなものだ。同じ土地に居るからといって、同じ世界で生きてはいない。そこには大きな隔たりが存在する。理解することなど出来はしない。 そして、人と獣が無理に交われば、そこには不幸な結末しか訪れない。獣には獣の生き方があるのだ。 扉を押し――まず死体を放り出してから、ハンクは外に出た。銃声は響くことなく、感染者たちのうめき声も今は聞こえない。 路上に出て、周囲を見渡す。対面にある公園の柵が見え、波音が心地よく耳を通り抜けていく。 式部が出てきたのを音で確認する。 このまま立ち去ろうとしたが、ハンクはふとそれを思いとどまった。どうせ最後だ。多少、色をつけてやってもいい。 「最後のサービスだ。再会したとき、私は君を撃たない。すぐには――だが」 「そういうのはサービスというのかしらね……。まあ、いいわ。さようなら、傭兵さん」 苦笑の刻まれた別れの言葉を背中で聞き、ハンクは道を歩き出した。式部の足音は躊躇うように響きの後で、小さくさようならと呟いたのが聞こえた。 本当に感傷的な女だ。足音は遠ざかり、やがて波音以外は何も聞こえなくなった。 【ダグラス・カートランド@サイレントヒル3 死亡】 【C-5/公園前の通り/一日目夜中】 【式部人見@流行り神】 [状態]:上半身に打ち身。 [装備]:?????? [道具]:旅行用ショルダーバッグ、小物入れと財布 (パスポート、カード等) 筆記用具とノート、応急治療セット(消毒薬、ガーゼ、包帯、頭痛薬など)、地図 [思考・状況] 基本行動方針:事態を解明し、この場所から出る。 1:モーテルと病院に行って、ヘザーを探す。 2:怪奇現象……認めてなんて…… ※オフィスビルから何か持ち出しているかもしれません。 【ハンク@バイオハザード アンブレラ・クロニクルズ】 [状態]:健康 [装備]:USS制式特殊戦用ガスマスク、H K MP5(30/30)、 H K VP70(残弾18/18)、コンバットナイフ [道具]:MP5の弾倉(30/30)×4、無線機、G-ウィルスのサンプル、懐中電灯、地図 [思考・状況] 基本行動方針:この街を脱出し、サンプルを持ち帰る。 1:道の東から脱出する。 2:現状では出来るだけ戦闘は回避する。 3:アンブレラ社と連絡を取る。 ※足跡の人物(ヘザー)を危険人物と認識しました。 ※C-5のオフィスビルに、ステアー TMP(0/30)、ダグラス(ベレッタM92(残弾 2/10)、ベレッタの予備弾倉 (×1)、手帳と万年筆、ペンライト、財布(免許証など)、携帯ラジオ)の所持品、及び"U.S.S."闇人4人の装備品(H KVP70×4(残弾不明)、H KMP5×3(残弾不明)、弾倉×2、無線機等)が残っています。しかし、実際に何が残っているかは、状態表にある人見の持ち物の結果に準拠します。 back 目次へ next MachRider HighWaaaaay!! 時系列順・目次 菊花の約 R Death13 投下順・目次 レギオン back キャラ追跡表 next ジャックス・イン 式部人見 暗闇を照らす光の中では ジャックス・イン ダグラス・カートランド 死亡 ジャックス・イン ハンク Unknown Kingdom
https://w.atwiki.jp/gensouiri/pages/1596.html
人生のリベンジャーが繰り広げるホラーストーリー(笑) 色んな意味で他の物語とは一味二味違うのでオヌヌメ。 -- (名無しさん) 2008-10-15 17 46 43 四周目後編のALL18禁な内容という贅沢っぷりに感動!!(ぇ -- (名無しさん) 2008-10-19 16 37 15 毎回毎回本当に見終わった後気持が沈むぜ!(褒め言葉 最後は納得の終わり方。こういう隠れた良作は人を選ぶ分 刺激的で面白い。ダーク好きにはオススメ。 -- (名無しさん) 2009-01-12 00 22 43 完結作品、グロいのが大丈夫なら是非オススメしたい きれいに纏まってて面白い、しかし四周目後編は(ry -- (名無しさん) 2009-07-18 21 16 07
https://w.atwiki.jp/deruze/pages/423.html
グレネードランチャーHP@現実&バイオハザードアンブレラクロニクルズ 見た目はM79グレネードランチャーで相違点はピストルグリップではなくライフルストックになっている点のみ。威力は若干強化されている模様。 グレネードランチャー(以下GL)系武器の中でも最高の威力を持ち改造によってロケットランチャー並みになるが代わりに爆発範囲が通常より狭く、リロードは普通のGLと同様遅め。素人にはオススメ出来ない。 シビルが持っているのは改造LV4※のもの、弾数は6、マガジンは2個、威力はSである。 ※アンブレラクロニクルズの武器は改造によって弾数、マガジン、威力を強化することができLV5まで改造する事ができる。 ただしLV5までいくと弾数無限になりパワーバランスが崩壊するため本ロワでは使えないものとする。
https://w.atwiki.jp/deruze/pages/462.html
9ミリ拳銃@現実 1982年に陸海空自衛隊に採用された自動拳銃。 スイスのシグとドイツのザウエル社の共同開発で作られたSIGP220をミネベアがライセンス生産したもので9㎜口径弾を使用する。 装弾数9+1、初速は345m/s 使用弾薬は9㎜拳銃用弾倉・ハンドガンの弾を使用。
https://w.atwiki.jp/deruze/pages/449.html
ペンダント@サイレントヒル3 本来はヘザーが父ハリーから誕生日にもらったプレゼント。 中には赤い宝石のような、液体が入っている。 赤い液体の正体はアグラオフォティス。
https://w.atwiki.jp/deruze/pages/302.html
掃討者 ダラララララララ… タタタン…タタン… 霧のたちこめる呪われた街の一角で響き渡る甲高い銃声… 小口径ライフル弾特有の軽い銃声もそれに混じる… ここに何もかも存在すら認めず…手当たり次第に殺し続ける 一人の化け物がいた… 『全部、終わらせてやる…ヴァアアアアアア』 ダラララララララララララ タタタタタン… (彼)の視界は…赤く濁っていた… 『ヒュー…ヒュー…装弾…』 戦闘用のグローブを着けた手が器用にMINIMILMG(軽機関銃) の箱型弾倉を交換する… ヒュー ヒュー ヒュー ダラララララララララ 『……ッ…』 べキャ…ゴキ… (彼)は手当たり次第に動く物に5,56mm弾の雨を降らせる… 目の前にいた動く腐った死体は次々と蜂の巣になり… 後方から掴みかかってきたリビングデッド(ゾンビ)は そのまま力任せに銃床で頭を叩き潰す… そんな彼を向かい側の民家から覗く一つの影が居た… 黒い布切れを纏ったそれの手元には…一丁の狙撃銃が握られていた… 『ハッ…こんな茶番に付き合ってられルカ…ニエキらねェ…仕事だぜ』 胡乱な声で黒い布切れを目深に被った化け物は…ちょうど、軽機関銃を 乱射している別の(人ならざるモノ)に照準器のレクティカル(十字線) を合わせる… 『死ね…』 タアァン タアァン タアァン 7,62㎜NATO弾を使用する高精度セミオート(半自動)狙撃銃の 銃声が3回響き渡る… ビシャッ ブシュッ グシェッ 『■■■■■………』 声にならない悲鳴を上げて道路で軽機関銃を乱射していた (人ならざるモノ)は既に(死んでいる)身で傷口を庇いながら… 付近にあった遮蔽物…犬の小屋の様なモノの影に隠れる… 『…被弾……した……発砲位置は…』 (彼)はかつて人間だった頃に多用していた…(力)を使う事にした。 ザザザッザー 視界が砂嵐に塗れ…次の瞬間にはこの周辺の(誰か)の視点から の視界が眼に浮かぶ…いや…正確には視界を(視)ているのだ… 一つ目…目の前に何がなんだか分からない原形をとどめてない肉片… グシャ…クチャクチャクチャ…ベキッムシャ… 先程(彼)が掃討した腐った死体の一部だった物…を貪っている咀嚼音 違う 二つ目…何処か屋内のようだ…そしていま(彼)が 隠れている犬小屋が視界の隅に確認できる… <ハッ…出て来いよ…居るのは分ってんだゼ?…ヒヒヒヒ> そんな事を言いつつ視界の(主)は手に持っているドイツ製の狙撃銃を 無性に撫で回してる… 無論、こちらが犬小屋の影に居る事を承知で… ザザザ… 『……………』 視界を元に戻した(彼)は迷彩戦闘服のポーチから一本の小型で棒状の物 を取り出し…肩に背負っていた自動小銃を一丁肩から外して、その銃口に まるで飾りを付け加えるような簡便さで…カチャッと小気味いい音を立てつつ 取り付けた。 その銃口を山なりに犬小屋の向こう側の民家の二階に狙いをつける形で 掲げる… 一方、民家の二階から外を照準器で探し回っていた…元UBCS隊員 アーノルドの(殻)の闇人は…不審がっていた。 『…何処に行きやがった?…炙り出してやる…』 そう言うと黒い布切れに覆われた元の戦闘服のポーチから 3個のHE手榴弾を引き抜き、無造作にピンを抜いて放り出そうと窓から 目を離した隙に… ポンッ シャンパンやワインのコルクを抜く音の様な 軽い破裂音 ヒュルルルルルルルルル… 『!?』 軽い爆発音が当たりに響き渡り、民家の二階部分の窓が爆発して 残骸が飛散する… (彼)は小銃を背負いなおし、再びMINIMILMGを腰だめに構えながら その場を後にする… 【A-3雛城高校周辺/一日目夜中】 【クリーチャー】 【屍人(永井頼人)】 [状態]腹部・左腕に銃創(回復中) [装備]迷彩服2型、MINIMI軽機関銃(180/200)、ライト [道具]89式小銃(30/30)、89式小銃(30/30)、MINIMI箱型弾帯(200×3)、89式小銃用弾倉×12 TNT高性能炸薬×4本、9mm機関拳銃(25/25)、06式小銃用てき弾×4、89式小銃用銃剣×2 9mm機関拳銃用弾倉×6、TNT用着火信管 [思考・状況] 基本行動指針:眼に入るもの全てを殲滅 1:引き続き新たな目標(呼ばれし者及びクリーチャー)を探し殲滅する 【備考】永井頼人(屍人)の攻撃対象は無差別です 彼が去ってから数分後…吹き飛ばされた民家の二階で一体の 闇人が死にかけていた… 闇人はその場で痙攣しながらも何とか回復するのを待って、 この場を移動しようと考えていた… ギシッ 不意に下の階から…軋む音が聞こえる ギシ ギシ ギシ 足音の正体はこの闇人が此処を狩場にしようと 最初にやってきたときに居た屍人…意識が胡乱だったので その場で頭を撃ち抜いて動けなくしていた筈だったが… そいつは片手に鋭利な刃物を持っていた… そのまま一歩ずつ近づき…傍に座り込むと… ぐさっ… ざくっ ざくっざくっざく… 動けなくなっている闇人を滅多刺しにし始めた ざくっ ざくっ ざくっ 【A-3雛城高校付近/一日目夜中】 【クリーチャー】 【屍人(美浜奈保子)】 [状態] [装備]出刃包丁 [道具]無し [思考・状況] 基本行動指針:??? 1:???? ※民家内にはPSG-1(10/10)が放置されています ※民家周辺には多数のゾンビの死骸と大量の空薬莢が転がっています
https://w.atwiki.jp/deruze/pages/444.html
双子ならば、同じ夢を見るのか 1.始原 全ての始まりの時、人は何も持たなかった 体には苦痛、心には憎悪の他には何も 争い傷つけあいながら、 死ぬことすらかなわず 永遠の泥土の中に、人は絶望していた 2.誕生 ある男は太陽に蛇を捧げ、救いを祈り ある女は太陽に葦を捧げ、喜びを願った 大地に蔓延する悲しみを憐れみ、 神はこの一組の男女から生まれた 3.救済 神は時間を作り、昼と夜を切り分けた 人に救いの道を示し、喜びを与え そして人から無限の時間を預かった 4.創造 神は自分に従い、人を導く存在を作った 赤の神スチェルバラ 黄の神ロブセル・ビス そして大勢の神達と天使である 最後に神は楽園を作り出そうとした ただ人が在るだけで幸せに足る世界 5.約束 しかし神はそこで力尽きて倒れた 世界の誰もがそれを嘆き悲しんだが 神はそのまま息を失い、土へと還った 今一度、生まれてくることを人に約束して 6.信仰 神は失われたわけではない 私たちは信仰を忘れず、祈りを捧げる 楽園への道が開かれる日を 待ち望みながら 荒廃しきった旧校舎の廊下で、コツコツと反響する自らの足音と化物共の徘徊する気配を聞きながら、宮田は頭の中に微かな疼きを感じていた。 飛び散った血液の生臭さと、鉄錆の臭い。 長い年月完全に放置されていたかの様に、薄汚く変色している壁や天井。 この校舎内は――――いや、この世界は、自身の受け継いだ病院「宮田医院」の隠し地下施設を連想させるのだ。 宮田家は、羽生蛇村の有力者・神代家の為ならば合法、違法を問わず、どの様な汚れ仕事でも引き受けてきた一族。その地下施設は言わば、村の暗部の集積場。 生者に敵意を剥き出しにして牙を向いてくる異形の者の存在は、あの地下で隔離されている人の出来損ないの様な化物の事を思い出させた。 幻覚の中で見た鎖に雁字搦めにされていた人々は、村の為に、神代の為に、と地下に収監、排除してきた人間達の事を思い出させた。 決して陽の目を見る事のない、白日の下に晒してはならない掃き溜め。 そんな言葉こそが、あの地下施設に、そしてこの世界には相応しい言葉のはずだ。 それが。そのはずが。 「 このせかいは『らくえんへのとびら』なの 」 あの幻覚の中で、おかっぱ頭の少女は確かにそう言った。 『楽園への扉』。ここは、『楽園』とやらを創造する神が復活する為の世界だと言うのだ。 その言葉を思い返し、思わず宮田は嘲笑を零していた。 眞魚教での楽園と言えば、幻想的な赤い海が広がり、地面一面には深夜に一度しか咲かないはずの月下奇人が咲き乱れている、永遠の命が約束される幻想的な世界。 求導師が――――その一身に村人達からの期待と敬慕の念を集める存在が導く、神の世界だ。 そのイメージとこの世界の様相は、余りにもかけ離れ過ぎていた。 「こんな世界が、楽園へ繋がると言うのか? これが……神の御業だと言うのか?」 頭の中の微かな疼きの正体は、苛立ちだった。 こんな、暗闇に閉ざされた世界が。あの宮田医院の地下と大差ない世界が楽園への道だとは、宮田に対しては強烈な皮肉だ。 いや、この世界が眞魚教の楽園ではない事は理解している。これは異教の楽園。求導師の導く楽園とは違う世界だ。それは、充分理解している。 だがそれでも、宮田医院と重なる世界を楽園と呼ぶのは、気に食わなかった。 あんなものは楽園ではない。 羨望。空虚。憎悪。様々な感情を殺し、影に徹してきた自分の裏の行動全てが押し込められている場所が、あそこだ。あんな場所が楽園であって、たまるものか――――。 「…………………………ふん」 冷静さを欠いていた事にふと気付き、宮田は浮かべていた嘲笑を自身に向けた。 そして、すぐに口元の歪みを消し、作るのは一欠片の感情も読み取れぬ仮面の様な表情。 そうだ。感情的になるには早過ぎる。 今はまだ、少女から聞いた――――いや、少女『が』聞いた情報の全てが正しいと決まった訳ではない。 少女が見た――――少女が『見せてもらった』物が正しいのかどうか。それをこの目で確認し、裏付ける為に、自分は今ここに来たのだ。 苛立ちは、押し殺す。いつもの様に、感情は抑え込む。 怒りに打ち震えるのは、後でいい。この世界で何が起きているのか、確信を得たその後で。 一つの部屋の前で、宮田は足を止めた。 見上げた視線の先にあるのは、『図書室』と表記された今にも朽ち果てそうな木製のプレート。 少女が見知った情報は、ここにあるはず。ここが、この世界の謎を解き明かす為の第一歩のはずだ。 雛城高校旧校舎2F・図書室 血液の生臭さと鉄錆の臭いに混じり、充満しているのは古書の特有の臭い。 通常の高等学校と同じく、それなりの量の本がこの図書室内には置かれていた。 一通り室内を回り、本棚に並べられている本の背表紙を眺めてみるが、特別に目立つ本はない。 ここに来ればすぐに目当ての本が見つかると思っていたが、その見通しは甘かったのか。 机に腰をかけて棚を見返し、一冊一冊調べなければならない作業を想像する。宮田の口から、溜息が吐き出された。 夕方に鳴り響いたものと同様のサイレンが轟いたのは、その直後だった。 校舎全体が振動で震える中、世界はやはり夕方同様変わり行く。 血や鉄錆、その悪臭。生理的嫌悪感を醸し出すものが全て消え、残ったのは何処の高校にもある様な図書室と、古書の臭い。 既に真夜中である故に暗闇が晴れる事はないが――――『表の世界』に戻ったのだ。 「サイレンにより世界は裏返る…………か」 確かめる様に、宮田は周囲を見回す。世界が薄汚れていた痕跡は、綺麗に無くなっていた。 だからと言って、やる事が変わった訳ではない。宮田は諦めた様に机から立ち上がり、手前の本棚に手を伸ばした。 「 こっちだよ 」 背後から投げ掛けられた――――いや、脳内に響いたのか。 奇妙な、そして無邪気な声に振り向けば、いつの間にかそこには先程のおかっぱ頭の少女が立っていた。 「……こっち?」 少女は静かに手を持ち上げ、机の一つを指さした。 その上には、世界が変化する前には見当たらなかった幾つかの用紙や本が乱雑に積み重ねられている。 「……そうか。あなたは『裏の世界』には来れなかったのでしたね」 これも少女から聞いた情報だ。 世界はサイレンと共に裏返る。 一度目のサイレンが鳴り、世界は変貌した。――――その様に、宮田達には見えた。 だが、実際には少し違う。 世界はサイレンと共に『裏返る』 『表の世界』から『裏の世界』へと『裏返る』 すなわちそれは、『表』に対する『裏』が存在するという事。 世界は変貌を遂げるのではない。2つの世界は同時に存在しており、そしてサイレンでもう1つの世界へと移行するのだ。 とは言え、変貌だろうと移行だろうと、それが分かったところで宮田としては大差はない。 サイレンで世界が裏返れば、それに抗う術も無く、宮田はもう1つの世界へと引きずり込まれるのだから。 しかし、少女は少々違う。少女は、最初のサイレンで何故か『裏の世界』には移行出来ず、『表の世界』に取り残された。 そこに意味や理由があるのか――――分からないが、その後少女は『表の世界』の図書室で情報を集めたと言う。それが机の上に積まれている書物類なのだろう。 積み重ねられている山を、上から順に確認していく。 『サイレントヒルのルール』 『街を徘徊する怪物の情報』 これらの用紙には、ハリー達と確認した時と同じ、或いは少女から聞かされた通りの情報が表記されていた為、目新しい情報は無い。 『呼ばれし者の名簿』 記載されている名前の中に『牧野慶』『神代美耶子』の文字を見つけた時、宮田は直ぐ様少女に問いかけた。 名前の上に引かれている赤い線。これは何を意味するのか、と。 答えを聞く前から、宮田にはある程度の想像はついていた。果たして少女の返答は、簡潔でありながらも宮田の想像通りのもの。 「 死んじゃった人 」 ふと、かつての記憶が甦った。 あの日の雪の冷たさ。きっと宮田はあの日の事を忘れられはしないのだろう。 牧野怜治。先代求導師の葬儀の日。それは同時に、求導師の代替わりの儀式の時でもあった。 兄は新しい求導師として、彼の義父の葬儀を執り行った。 凍て付く寒さと極度の緊張で震えていた兄に、宮田は無表情を装いながらも羨望と憎悪のまなざしを向けていた。 何度、あの場所に立つ事を望んだだろう。自分と兄と、一体何が違ったのだろう。 赤ん坊の時。牧野怜治と宮田涼子が自分達を見つけた時。何が運命を分けたのだろうか。 牧野怜治が自分を選んでくれていれば、あの場所に立っていたのは自分だったというのに。 ただ2分の1の確率。それだけで決まってしまった地獄の様な日々。それだけに、あの場所への想いは大きくて。 同じ顔をしながら、人々の尊敬を集める兄の立場に憧れていた。 同じ顔をしながら、悪意に塗れるしかない自分の運命を呪っていた。 同じ顔をしながら、自分の苦しみを知らない兄を憎んでいた。 それでも――――宮田が何を望もうと、何を思おうと、突き付けられたのは、あの場所に立つのは兄だという現実。 側に立つ求導女に支えられ、葬儀を執り行う新しい求導師。 あの日に見た兄の姿は、それまで以上に憎く、同時に、眩しく映った――――。 その牧野慶が、死んだ。この世界で、生命を落とした。 宮田の胸中には何とも言えぬ息苦しさが広がっていた。 それは、やり場を無くした憎悪が渦巻いているのだろうか。それとも単純に唯一の肉親を失った悲しみか。或いは、これで何の躊躇いもなく求導服を纏える事への歓喜なのだろうか。 宮田には、分からない。だが、何にしても。 「……これで求導師は、代替わりですね。………………牧野さん」 誰に語りかけるでもなく、宮田は言葉を漏らした。感情の読み取れない視線を『牧野慶』の名前に落としたまま。 束の間の静寂。宮田は一つ息を吐き出し、視線を動かした。 名簿に記載されているその他の知人の名前は、この街で出会ったハリー、ジム、風間と彼等から聞いたシビル・ベネットや逸島チサトの名を除けば求導女『八尾比沙子』のみ。 とりあえずそれだけを記憶に留めて、宮田は次を手に取った。 それは、とあるページが最初から開かれている一冊の本だった。 タイトルには『礼賛文書』と書かれている。この街、サイレントヒルに根付いていた土着信仰から発展した独自宗教の聖典らしい。 開かれていたページに書かれているのは――――サイレントヒルに伝わる神話と、神を目覚めさせる方法。 それは、この街で起きている異変の正体として、おかっぱの少女が宮田に伝えた情報だった。 その神話は『全ての始まりの時、人は何も持たなかった』の一文から始まり――――。 「『――――祈りを捧げる。楽園への道が開かれる日を待ち望みながら』……か。 ……なるほど。少なくともあなたがあの幻覚の中で言っていた事は全てが本当だった。 という事はあそこに囚われた人々も、実際の形はどうあれ存在するのでしょうね」 「 あのお姉ちゃんも、いるよ 」 「……そうですね。ここであなたにこれらの情報を与えた『がいこくのお姉ちゃん』も実在するのでしょう。 そして……『メトラトンの印章』、でしたね?」 宮田は最後の本『異界の法則』と『少女が受け取った』という地図を見比べながら、幻覚の中で聞いた単語を反芻した。 おかっぱの少女は、単独でこれまでの情報を探り当てたわけではない。少女に情報を提供した者は別に存在する。 それが、少女曰く『がいこくのお姉ちゃん』だ。 『がいこくのお姉ちゃん』はここで少女に情報の他に手書きの地図とペンダントを託した。 その手書きの地図に記されているのは、このサイレントヒルでメトラトンの印章――――魔封じの力を持つ強力な魔方陣――――を描くべき幾つかの場所。 それを完成させれば、この怪異を終わらせる事が出来るというのだ。 だが、これはあくまでも少女が『がいこくのお姉ちゃん』から聞いた情報に過ぎない。 幻覚の中での少女との会話は事実。それは証明出来たと言える。 それでも、肝心要の『神の復活による楽園の創造』、そして異変を終わらせる為の『メトラトンの印章』に関する話の裏付けは取れていない。 『がいこくのお姉ちゃん』の存在は確かなものなのだろうが、情報自体の信憑性は不明だ。 仮に『がいこくのお姉ちゃん』が彼女にとっての真実を話しているとしても、その情報そのものが間違っている可能性は無くはない。 そもそも彼女は何者なのか。何故少女に情報、地図、ペンダントを託したのか。託した後は何処に消えたのか。そして、メトラトンの印章とは、どう描けばいいのか。 新たに生まれたそれらの疑問を解き明かす為にも、まずは『がいこくのお姉ちゃん』と接触する必要がある。 「一応聞きますが、『がいこくのお姉ちゃん』が何処に居るのかは……」 宮田の問いに、少女は首を横に振った。どうやら、手がかりは無いらしい。 『異界の法則』でメトラトンの印章の情報を確認し終えると、宮田は本を机の上に戻し、少女に向き直した。 「もう1つ聞きます。地下にあった羽生蛇村。あれは現在の下粗戸ではない。 27年前に土砂崩れで埋まったはずの……大字波羅宿と呼ばれていた頃の下粗戸でした。 何故27年前に土砂崩れの被害にあった村の一区画が当時のままの姿でこの街に在るのです? 27年前の儀式の失敗が、この街と何か関係しているんですか?」 少女は、もう一度首を振った。これも、少女には分からないのだ。 いや、そもそも少女に分かるのは『がいこくのお姉ちゃん』よりもたらされた事だけなのだろうが。 少女の申し訳なさ気な表情を受け止めると、そうですか。と、宮田は頷いた。 確認したい情報はこれで全て確認した。この図書室には、もう用はない。 「時間はいくらあっても足りない。俺は行きます」 礼を告げて身体を翻す宮田を、「 まって 」と少女は引き止めた。 振り向くと、少女は今度は宮田の身体を指さしている。 「……何です?」 「 悪いお水、こっちには来れないよ 」 少女が指しているのは、白衣のポケットの容器だった。 蓋を開け、中を覗く。中は、透き通る水になっていた。 「……なるほど。それを先に教えて頂きたかった」 「 お薬は、悪いお水や悪いかみさまをこらしめるの 」 一度聞いた情報だ。 それを再び口にする少女の真意が分からず、宮田は怪訝な顔を向けるが、続いて紡がれた言葉にその表情は得心のものと変わった。 「 悪いお水のあとにのむと、死んじゃうよ 」 「……効果を打ち消す訳ではないのですか?」 「 死んじゃうよ 」 繰り返される否定。 容器を一瞥し、宮田はそれを机の上に置いた。使えぬ物ならば持っていても邪魔なだけだ。 宮田は再度少女に礼を告げ、図書室の引き戸を開けた。 何処に居るかも分からぬ『がいこくのお姉ちゃん』を見つけ出し、情報の真偽を証明する。 ここから先は、図書室内の調べ事とは比べ物にならない程の労力が必要とされるが、投げ出す訳にはいかない。 幼い頃からずっと、誰よりも強く憧れていたあの求導服を纏う資格は、真実を明らかにして初めて得られるはずなのだから。 人々を導く役目は、何よりも自身が成すべき事を理解せずして全う出来るはずがないのだから。 それが、求導女の操り人形と成り下がっている牧野慶をずっと見てきた――――ずっと否定してきた、宮田なりの解釈。双子であろうとも、自分は、兄とは違う。 地下にある『過去の羽生蛇村』を目指すのは――――その後だ。 雛城高校旧校舎2F・廊下 廊下は、奇妙な程に静けさを増していた。 図書室に入る前までは確かに聞こえてきていたはずの化物共の蠢く気配。 何故かは分からないが、それが今はまるで聞こえて来なかった。 それ故に――――宮田の耳は、その音を正確に拾っていた。確かな意志を持って、長く暗い廊下の奥から宮田の元へと近付いて来る、その足音を。 「お前、さっきの…………いや、違う奴か?」 警戒する宮田の視界に、その姿が朧気に浮かび上がってきた。 巨大な三角錐の金属で完全に覆われた顔を宮田に向けて、そいつは廊下をゆっくりと歩いてきた。 手に持つのは先程の巨大な鉈とは異なり、長槍。 レッドピラミッドシング――――異形の者でありながら罪人を裁く、断罪者。 図書室の用紙には、確かそうあった。 「俺を裁く為に来たのか?」 三角頭は、答えない。 宮田も、答えを求めようとは思っていない。 「『宮田司郎』を……裁きに来たんだな。……ふん、それはそうだな」 宮田が羽生蛇村で行ってきた事は、それが幼い頃より定められた宿命だったとしても、それが決して抗えない運命だったとしても、言ってしまえばただの犯罪だ。 求導師とは真逆の、光の当たる事の無い、闇に染まりきった人生。本来ならば裁かれない道理がない。裁きを受けて当然の身なのだ。それは宮田も嫌という程自覚している。だが――――。 一発の銃声が、廊下に響き渡った。 宮田の手の中から硝煙が立ち昇る。 槍を持つ巨人の歩みが、止まった。 「だがな、それはお前の仕事じゃない」 そう。宮田を裁く者は、既に決まってる。 あの幻覚を見せられた時から――――求導師としての役目を意識した時から、既にそれは決まっていた。 それが、『医師・宮田司郎』としての最後の役目だ。その役目は、譲れない。 「お前など必要ない。『宮田司郎』は――――俺が殺す……!」 断罪者が、確かに一歩、退いた。 【A-3/雛城高校旧校舎2F・廊下/二日目深夜】 【宮田司郎@SIREN】 [状態]:健康 [装備]:拳銃(4/6)、ネイルハンマー、二十二年式村田連発銃(5/6) [道具]:懐中電灯、ペンダント@サイレントヒル3、ハンドガンの弾(30/30) 花子さんから受け取った手書き地図、ルールと名簿の用紙、クリーチャー情報の記載された用紙 [思考・状況] 基本行動方針:生き延びてこの変異の正体を確かめ、此処に捕われたものを救済する。 0:断罪者(三角頭)を撃退する 1:『がいこくのお姉ちゃん』を探し出して話を聞く 2:変異についての情報が真実だと確認出来たら地下の羽生蛇村へ向かう ※花子さんから様々な情報を得ました。 ※花子さんから受け取った手書き地図には、『メトラトンの印章』を配置する場所が記されています。 ※『神の復活』、『メトラトンの印章』の情報が正しい物なのかは現時点では不明。後続の書き手さんに一任します。 メトラトンの印章@サイレントヒルシリーズ 強力な魔除け、魔封じの力を持つ魔方陣の名称。 サイレントヒル1にてアレッサ・ギレスピーが神の復活を阻止しようとサイレントヒルの至る所に描いた印章。 この印章を描いた場所を線で結んだ図形が、巨大なメトラトンの印章となるように配置をする事で初めて効力を発揮する。 ただし、原作内でこの魔方陣が実際に発動した事は無いので、効果の程は不明。 (ダリア・ギレスピーが何としてもアレッサを止めようとしていたので、効力の信憑性はあるにはあるが) サイレントヒル3にてタリスマンのメトラトンの印章も登場したが、こちらでは(少なくとも一つでは)効力は発揮出来ない。 書:異界の法則@サイレントヒル3 ヴィンセントがヘザーに渡した本。 メトラトンの印章について以下のように書かれている。 これは強力な魔除け・魔封じの力を持つ魔法陣で、“ヴィルンの第七紋章”、あるいは“メトラトンの印章”と呼ばれる。 対象の善悪を問わず効果を及ぼし、その強力さ故に使用者に対しての負荷も非常に高い。扱いも難しいので、普通に使われることはない。 だからこそ、“神の代理人”とも呼ばれる、天使メタトロン(メトラトンは彼の別名である)の名がつけられているのであろう。 back 目次へ next The Others 時系列順・目次 過去は未来に復讐する オナジモノ 投下順・目次 遠い出来事 back キャラ追跡表 next Twilight Deadzone 宮田司郎 最後の詩
https://w.atwiki.jp/deruze/pages/267.html
トワイライトシンドローム SIREN 学校であった怖い話 ひぐらしの鳴くころに 流行り神 サイレントヒル バイオハザード 零~zero~ クロック・タワー 19世紀以前または不明 創世:闇那其が死に、世界が生まれる。太古:闇那其の骨の一つが注いだことで光の大洪水が起こり、古の者たちは虚無の世界や深海に逃げ込む684:堕辰子、村人に食われる。八尾比沙子、呪いにより不老不死に。 数百年前:道明寺秋彦誕生??:F.O.A.F.発足 ~16世紀インディアンたちの聖地として信仰の対象になる16世紀後半:開拓民による入植開始17世紀前半:伝染病により放棄される1861:南北戦争によりトルーカ捕虜収容所設立1865:終戦後、収容所はトルーカ刑務所に改設1890:神隠しが相次ぐようになる 1837:天保8年12月13日。裂き縄の儀式、失敗 1900年代 トルーカ刑務所閉鎖 1910年代 1918:観光船リトル・バロネス号消失 1920年代 20年代前半:東京の地下研究所で死者の霊魂を操る「悪魔の実験」が開始される 1930年代 1938:××村33人殺し 30年代:「悪魔の実験」が中断される 1940年代 1950年代 1960年代 1968:アレッサ・ギレスピー誕生 1966:始祖ウィルス発見1968 アンブレラ製薬会社設立 1970年代 1976.8:土砂流災害、三隅郡直撃同:夜見島島民消失事件発生 1979.6.24 ダム現場監督殺人事件及び主犯格の失踪 1975:サイレントヒルの繁華街で火災発生。アレッサが大火傷を負う 1978:T-ウィルス開発成功 1980年代 1986.8:ブライトウィン号消失事件発生 1980.6.22 北条夫婦転落事故。1981.6.21 古手家神主病死及び妻入水自殺。1982.6.20 北条義母撲殺事件後、北条悟史失踪。1983.6.19 (綿流しの日)富竹ジロウ鷹野三四死亡。(鷹野三四の死については偽装)その後各編派生 1982 ハリー、シェリルと共にサイレントヒルを訪問同年:ヘザー・モリス誕生 1988:マーカス暗殺。同:「タイラント」の開発。同:欧州で「ネメシス計画」発動 1986.9:真冬と深紅、氷室邸を訪問 1990年代 1996夏:ユカリ、チサト、ミカが旧校舎探検を行う 1995.6:七不思議の集会、開幕 1990年前後:霧崎水明、『さとるくん』事件と遭遇同:霧崎道明死亡(?)同:初代編纂室解散同:霧崎水明15歳。風海家に引き取られる5年後:霧崎水明、式部人見の友人が常世島で行方不明に 1994:ウォルター・サリバン、逮捕同:ジェイムズ、サイレントヒルにて行方不明1999:ヘザー、サイレントヒルにて教団の目論見を撃破 1991:「G-ウィルス」開発始動1998.6:アークレイ研究所でウィルス漏洩同.7:洋館事件発生同.9:G-ウィルスの開発成功。ラクーンシティ、崩壊。同.10:ラクーンシティ、消滅1998~?:2004年までに、アンブレラ製薬会社、業務停止命令による株価暴落で事実上崩壊 1995:クロックタワー事件発生1996:オスロにて、シザーマンによる猟奇殺人事件発生 2000年代 2003.8:土砂流災害、羽生蛇村一帯を直撃2005.8:夜見島付近にて、民間船と自衛隊機消失 200X:風海、小暮『コックリさん』事件と対峙同:風海、小暮が編纂室に異動同:風海、小暮『鬼』事件と対峙同:風海、小暮『チェーンメール』事件と対峙同:風海、小暮『名前のない駅』事件と対峙翌年:賀茂泉かごめが編纂室に異動 2004:ヘンリー、サウスアッシュフィールドハイツ302号室に閉じ込められる 2004:ロス・イルミナドス教団の手の者に合衆国大統領令嬢が誘拐される キャラクター参戦時期 岸井ミカ:1996年。12月。原作終了後(チサトと同日)逸島チサト:1996年。12月。原作終了後(ミカと同日)長谷川ユカリ:1997年。12月。ミカ、チサトより1年後 SIREN須田恭也:2003年8月3日。美耶子と出会う直前宮田司郎:2003年8月3日。恩田美奈を殺して埋めた直後美浜奈保子:2003年8月4日。水蛭子神社の泉に入水した直後八尾比沙子:2003年8月5日。いんふぇるのから奈落へ落ちた後神代美耶子:2003年8月3日。恭也と出会う直前牧野慶:2003年8月3日。儀式を失敗した直後SIREN2阿部倉司:2005年。原作終了後。「働けない世界」藤田茂:1986年8月3日。赤い津波に呑まれた直後三沢岳明:2005年8月3日。永井と逸れた後太田ともえ:1976年8月3日。赤い津波に呑まれた直後 日野貞夫:1995年6月2日以降。AMCVol.1「恵美ちゃんの殺人クラブ観察日記」開始後新堂誠:1995年6月2日以降。AMCVol.1「恵美ちゃんの殺人クラブ観察日記」開始後岩下明美:1995年6月2日以降。AMCVol.1「恵美ちゃんの殺人クラブ観察日記」開始後風間望:1995年6月2日以降。AMCVol.1「恵美ちゃんの殺人クラブ観察日記」開始後福沢玲子:1995年6月。SFC版またはPS版、福沢玲子第5話「呪われたロッカー」シナリオ途中 前原圭一:1983年6月。罪滅し編終了直前古手梨花:1983年6月。皆殺し編終盤鷹野三四:1983年6月以降。皆殺し編終了後園崎魅音:1983年6月。鬼隠し編で圭一のお見舞いに向かう途中園崎詩音:1983年6月。目明し編終了前後竜宮レナ:1983年6月。鬼隠し編で圭一のお見舞いに向かう途中 式部人見:200X年7~8月辺り。原作終了後風海純也:200X年9月辺り。原作終了後(式部人見失踪より一ヶ月程後)霧崎水明:200X年9月辺り。原作終了後(式部人見失踪より一ヶ月程後)小暮宗一郎:200X年9月辺り。原作終了後(風海純也出発より数日後) サイレントヒルマイケル・カウフマン:1982年。原作開始直後ハリー・メイソン:1982年。路地でシェリルのスケッチブックを見つけた直後シビル・ベネット:シビル生還EDから数年後。サイレントヒル2ジェイムス・サンダーランド:1994年。入水自殺ED直後エディー・ドンブラウスキー:1994年。ボウリング場でジェイムスやローラと出会う直前サイレントヒル3ヘザー・モリス:1999年。原作終了から数週間後ダグラス・カートランド:1999年。ヘザーと共に車でサイレントヒルへ向かう途中クローディア・ウルフ:1999年。原作終了から数週間後 バイオハザード アンブレラ・クロニクルズハンク:1998年9月30日。G-ウイルス回収後ブラッド・ヴィッカーズ:1998年9月28日。追跡者に殺害される以前カルロス・オリヴェイラ:1998年9月26日。ラクーンシティに投下直後ジル・バレンタイン:1998年9月28日。ラクーン警察署に到着前バイオハザード2レオン・S・ケネディ:1998年9月29日。ラクーンシティ到着前シェリー・バーキン:1998年9月29日。ラクーン警察署に到着後バイオハザード・アウトブレイクジム・チャップマン:1998年10月2日。特殊エンド直後ヨーコ・スズキ:1998年10月1日。ラクーン大学探索中ケビン・ライマン:1998年10月2日。特殊エンド直後 雛咲深紅:1986年10~12月。原作終了後雛咲真冬:1986年9月24日。OP前。氷室邸に向かう最中氷室霧絵:1986年9~10月。原作終了直後 エドワード(シザーマン):1996年。原作終了直後。異次元の扉から追放された後ジェニファー・シンプソン:1996年冬。原作終了後